「受け取れませんよっ!新井課長まで濡れちゃって風邪ひいたらどうするんですか?


課長が休んだらオフィスが…」


「オフィスが?」


「…無法地帯と化します!」


真剣な表情でとんでもないことを言うから、思わず笑ってしまうと


彼女は「本当ですよ‼」と、何度も強く言う。



「オフィスが無法地帯とか…想像できないけど…


このまま果穂さんがこんな場所で雨宿りしてるなんて俺は嫌です。」


「それなら、タクシー呼ぶから大丈夫ですよ」




いつも思う。


彼女は自分から誰かに頼ろうとしない。


最初は強い女性なんだと思っていたけれど…この1ヶ月近く、彼女をみて来て俺なりに分かったんだ。


彼女は強いわけじゃない。

自分に厳しいだけなんだということ。



だからこそ


甘えてもらえないかと…


考えてしまうんだ。