彼はドアノブに手をかけたまま、私をじっと見つめていた。
頭では分かってる。この人は人に害をあたえるような悪い人じゃないって
ずっと見てきたんだ、私が一番よく知っているじゃないか
なのにどうして身体の震えがとまらないの
どうして言葉が出てこないの
怖い。
もしかしたら殺されてしまうんじゃないか
一番最悪なケースを想像してしまった。
彼の描いた漫画のリアルさを思い出してしまったんだ。
私の好きだったキャラが死んでしまったあのシーンとあと数分後の自分が重なるんじゃないかって
部屋の中はエアコンのおかげで暑くもなく寒くもない丁度いい気温で保たれているといのに私はじっとりと汗をかいていた
どれくらいこの緊迫した時間が流れただろう。たった数分が私にはとても長く感じられた
