私も先生に抱き締められて安心したり、優しい気持ちになったりしたっけ・・・
「店長・・・ううん、伊勢谷さん。ずっと気持ちに気付けなくてごめんなさい」
「こんなことになってしまったけど、私が伊勢谷さんを想う気持ちは変わりません。異性として好きになることは出来ないけど今も変わらず家族のように大切な人です」
「独りぼっちだった私にとってかけがえのない存在なんです」
私は語りかけるようにそういった。
だいぶ落ち着きを取り戻した店長は体をおこすと少し赤い目をこすりながら自分のシャツを脱ぎ私の体にかけてくれた。
「彼がひよりちゃんを傷つけたり、突き放すようなことをしたら、いつでも戻っておいで。いつまでも待ってるから」
「店長・・・ありがとうございます。私・・・」
「こんなことがあったんじゃ彼に後ろめたいからね、今日かぎりで一度さよならしよう」
さよなら・・・
なぜか店長の後ろ姿がとても遠く見えた。
心にポッカリ穴が空いてしまったみたい
「今はひよりちゃんの幸せそうな顔みれそうにもないしね。僕ももう少し大人にならなきゃ・・・いい年なのにね」
そう言いながらいつもの優しそうな顔で笑ってみせてくれた。
もうこの笑顔が見れなくなるかと思うと胸がキュっと締め付けられるようだけど
今はそれが一番良いのだと自分に言い聞かせた。
「さようなら、ひよりちゃん・・・」
「さようなら、伊勢谷さん・・・」
最後に優しく微笑んで、その場を去っていった。
玄関の戸が閉まる音と共に涙があふれてきた
指輪が慰めるようにキラキラと輝いてくれていて、すぐ傍で先生が私を抱き締めてくれているように感じた
