「そうか、ひよりちゃんは完全にあの男のものってわけか・・・」
さっきまで怒りに満ちていた瞳は鎮火したように、いつもの色を取り戻した。
「・・・ずっと僕の傍にいると思ってた。小さい頃からうちの書店に来てくれててその頃から知ってたから、このまま、一緒に・・・」
「でもいつしか僕の知らないところで、ひよりちゃんはひよりちゃんの景色を、人を見ていたんだね・・・」
私の頬にポタリ、ポタリ・・・店長の涙が降りそそいだ。
「いつも傍にあった大切なものを、突然横取りされた気分なんだよ・・・泣いても仕方ないだろ?」
店長は目一杯に涙をためて微笑みながらそう言った。
そして、そのまま私に覆いかぶさるようにうずくまって肩を震わせた。
自分より大きい背中なのに、今はとても小さくか弱く思えてしまう・・・私にできることといえばこの人を力いっぱい抱き締めること。
それしか思い浮かばなかった
