悪い人【完】



伊勢谷正文(いせや まさふみ) 27歳

伊勢谷堂という個人経営の書店の店長で、独身。
少しタレ目の優しい瞳に、それに似合う長いまつ毛。アンティークの丸メガネがよく似合ってる


「どうして店長は結婚しないんですか?」
いつもふとした時に考えていたことが口に出てしまって、自分で聞いたことなのにあたふたしてしまった。


店長は少し驚いたような顔をして、そして笑いながら
「んー、好きな人がいるんだけど・・・まぁ、ちょっと」


自分のデリカシーの無さを後悔したが店長の「ちょっと」の先が気になって、せっかく淹れた美味しいコーヒーの味がわからなくなってしまった



私の気持ちを察するように、コーヒーを一口飲んだ店長が
「僕より年下すぎてね、なんか悪くて」
と付け足した。




店長の意外な姿をみてしまった気がする。

まさか店長が恋をしてただなんて。




自分もそういう相手がいないわけじゃないけど、これが恋なのか分からなくてコーヒーと共に言葉を飲んでしまった。


誰かに相談できたらこの気持ちになにか進展があるかもしれないのに・・・なんてまた後悔をしながら