悪い人【完】




一度自宅に帰った私は急いで支度を整え、先生の車へ乗り込んだ。

9時まであと15分しかないが、車なら5分で着く距離だ、なんとか遅刻しないで済みそう


先生の家から自宅までは少し距離があったので、車で送ってもらえてとても助かった。


しかし先生が車に乗っているイメージがなかったから意外だった、話を聞くと、伊勢谷堂にくる時も車で来てたんだとか。

まぁこの距離だし、帰り際に沢山本を買っていくから歩くのには無理があるかな



いつも歩いている距離が車だとどんどん過ぎていって、あっという間に伊勢谷堂の裏についた。

車を降りる際に「いってきます」と声をかけると先生は運転席から身を乗り出して

「終わったら連絡してね、迎えにくるから」と言った。



先生も仕事があるんだし送り迎えをしてもらうのもどうかと思ったけど、今は私も先生と一緒に居たいしお言葉に甘えることにした。


先生の車が見えなくなるまで見送ったあと
深呼吸をして裏口を開けた


店内で開店前準備をしているであろう店長に聞こえるように少し大きめの声で「おはようございます」と言うと



ガタン!パタパタパタ・・・ガチャ!


慌てて事務所に入ってきた店長が私の姿をみて、安堵するように肩を落とした

「てっきり事故にあったんじゃないかとか突然病気にかかったんじゃないか、悪い奴に拐われたんじゃないかって・・・でもよかった。」


う、あながち間違いでもない・・・


「店長、昨夜は申し訳ありませんでした。帰りにスマホ落としちゃって、それから電源がつかなくなったものですから連絡できずにいました。心配をかけて本当にごめんなさい!!」

何度も先生の車の中で考えて復唱した台詞だ。

それにしても心が痛い・・・やっぱり嘘は苦手だな
特に相手が店長だとなおさら・・・

これが最後の嘘にしたいな。



「なにはともあれ、ひよりちゃんが無事ならそれでいいんだ。大切な従業員に何かあったらショックで立ち直れないからね・・・」

「ありがとうございます」


後ろめたさが尾を引いて、店長の目を見れないでいた。