時計はすでに0時をすぎて新しい今日を迎えていた


身体から沢山の水分を失っていた私は落ち着くと喉が乾いていたことに気がついた
さっきまで散々泣いてたんだ、無理もない

目は重たく感じるし、身体もぺとぺと・・・

シャワー浴びたい。



のんきなことにこれから自分がまだどうなるかハッキリ分かっていないのに、安心してしまってるのか頭の中は欲だらけだ。




あと、できれば店長に連絡してあげたい・・・


もしかしたら沢山の着信がかかってきてて、今頃家に居ない私を探して外を走り回ってるんじゃないか

店長の必死な姿が目に浮かぶ。




ガチャ



ついさっきまで泣きじゃくる私をなだめていた先生が食事と蒸しタオルと私のバッグを持って部屋に戻ってきた。


この空間になれていないせいか、小さなドアの音にも過剰に反応してしまう
今はこの酷い顔を見られたくなくて視線を逸らした。



彼は私の欲求を全て把握してるかのように

「職場に・・・伊勢谷さんに連絡したいよね」

と確認するように尋ねた

私はコクンと頷いて

「伊勢谷さんに一言でも・・・」

と小さくつぶやくように答えた。

「・・・」


私が”伊勢谷さん”というワードを出した途端、一瞬だけ彼の顔が冷たくなったように見えたのは気のせいだろうか・・・


彼は考えるように黙りこんで、かわりに冷えた水と蒸しタオルを手渡してくれた



身体が真っ先に欲していた水を口に含むと、その冷たさが身体中にいきわたるようだった

一気に飲み干して一息つく

そして、ほんのり温かい蒸しタオルで顔を包んだ


気持ちいい。


さっきの水が入っていた、まだ冷たさが残るコップをまぶたに当てて冷やした
少しはこの酷い顔がマシになればいいのに


「あとで冷たいタオル持ってくるね、氷水の方がいいかな?」

私を気遣うように聞いてくれたのに、余裕がなくて答えられなかった。
身体の欲求が満たされた今、頭の中は伊勢谷さんに連絡できるか、できないかでいっぱいだ。



「連絡してもいいですか・・・無断欠勤だけはしたくないのでお休みの連絡だけでもしたいんです」

無理だろうと思ったけど精一杯の勇気を振り絞ってそう尋ねた。
彼の目は真剣で私を真っ直ぐとらえたまま



「わかった。でも伊勢谷さんに伝えなきゃいけないのは、仕事を辞めることと・・・別れの挨拶を。」