そして、先に沈黙をやぶったのは彼の方だった。
「ごめんね」
そう一言静かにつぶやいた。
私は理解することができず、彼の言葉に反応することができなかった
私にしたことを謝ったのか
それとも、これから私にすることを謝っているのか
頭が考えることを拒否しているみたいだ
もしかしたら言葉を忘れてしまったのかもしれない
そんな時にふと店長の顔が思い浮かんだ。
あの暖かくて優しい瞳を
そうだ・・・このまま帰れなくても、殺されるんだとしても店長には連絡しなくちゃ
きっと今頃私からのメールがこなくて心配してるだろう、店長はとても心配性だから
それに私が残した仕事もお願いしなくちゃいけないし、コーヒーの飲みすぎには注意するようにって言わなきゃ
こんな時に私は何を考えているんだろう
自分でも気づかなかったけど、いつの間にか泣いていた。
ポロポロとこぼれた涙はシャツの上に落ちて次々と跡をひろげていった
涙で視界が歪んでよく見えないけど、彼が近づいてくるのがわかる
あぁ・・・これでおしまいかもしれない
