「ちょっ!紅稀くん!!」


呼んでも振り向かず、スタスタと先を歩いて行く。


もうっ、今になって自分の足の遅さを恨むよ!


「ここ、使っていいから」


そう言って止まったのは1つの扉の前。


ここ…ってまさか住めって言うの本気なの!?


「え、待って?本気なの?私は大丈夫だよ?」


「本気。吸血鬼相手だといくら強くても負ける」


確かに、人間と吸血鬼は身体能力が違うと思う。


だけど、狙われてるからって理由でお世話になるのも…。


「…両親が気になるなら、俺が頼むけど?」


〝両親〟という言葉にドキリとする。


お父さんは海外出張中でいない。


お母さんも夜勤続きで家に帰ってくるのはあんまりない。


私は…1人なんだ。