誰にも知られない、語られない話


「……お母さん」

煙草の匂い。お酒の匂い。香水の匂い。

大量の匂いが籠っている。

気分が悪くなる匂いが充満している。

「……ん?……なんだよ?」

知らない男の人がお母さんのとなりで寝てた。

「……ごはん…」

「ん?あぁ……ほらよ」

べしっ。

お金を僕に叩きつけてお母さんは僕を睨んでからまた布団に潜り込んだ。

僕は落っこちたお金を拾って部屋を出る。

服を着替えて、顔を洗って、僕は家を出ていった。