俺はガイドンからライターをもらうと、葉巻に火をつけた。
そして思い切り吸った。
「フゥーーー…」
少しだけ気持ちが落ち着いた。
やはり過去にとらわれることは怖い。
「ーーーニカ」
「なんだ」
「次は絶対に出て行ったりするんじゃない」
「……っ!」
チッ、と舌打ちをすると、ニカは俺から離れていった。
そして茂みに投げ捨ててあったリュックを背負う。
「ーーー分かった、兎。
お前にいなくなられたら私が困るからな。
黙って従おうじゃないか。
ーーー先を急ぐぞ」
ニカは一人で歩き始めた。
「あ、ちょっと!ニカさん!
待ってくださいよー!!
ーーーいきましょう!ジョンさん!」
「っ!」
俺はガイドンに腕を掴まれると、そのまま引かれていった。
「………」
引かれる間、俺の頭にはやはり奴隷時代の自分がいた。
ーーーニカには…
あんな思いをさせたくない。
もし下手をして奴隷売りに捕まればーーー
ニカはあの頃の俺みたいになるだろう。
それだけはどうしても避けたかった。
ニカを心から愛しているわけではないが、俺と同じ道を歩ませたくないとだけは思っていた。
俺は黙って腕を引かれ続けた。
ーーー母さんはどうしてるだろう…
ふとそんなことを思っていた。


