『怖い…助けて下さい…!!』
殺された男の声だけが、俺の頭の中に響いていた。
自分がそう叫びたくて、仕方がなかったからだ。
「助…けて……」
誰にも聞こえない声で、小さく呟いた。
誰かに聞こえてしまえば、頭を撃ち抜かれてしまうと思ったからだ。
ーーーここから一歩でも動けば命はないと思った。
俺がしていいことは呼吸だけだと思った。
俺はひたすら呼吸だけを繰り返した。
荒くなったり、小さくなったり、叫びたいほどに乱れたりーーー
俺はそれを繰り返しているうちに、呼吸以外はしたくないと思っていた。
呼吸以外の全てが怖くなっていたのだ。
手をつくことも、立ち上がることも、そして考えることも怖くなっていた。
自分の前からいなくなってしまった母さんのことを考えると、悲しくなるどころか怖くなった。
俺は呼吸しかしちゃいけない…
呼吸しか……
呼吸しか………
「母…さん……」
そう呟いて、俺は気を失った。


