ーーー気づいたら俺は運搬車の中に戻されていた。
覚えていなかった。
母さんの手が俺から離れ、連れて行かれた後から、俺はまったく覚えていなかったのだ。
『母さん!!母さぁぁぁん!!!』
必死に泣き叫んだ記憶しか、もう俺の頭には残っていなかった。
母さんがどうやって連れて行かれたか、どんな言葉を叫びながら連れて行かれたか、俺は一つも覚えていなかった。
ーーー運搬車の中は以前より暑くなかった。
多くの人が売られていなくなったからだ。
「………」
俺は隅で膝に顔をうずめていた。
抱きしめてくれる人はもういない。
「ーーー助…け…て……」
ビクッ
急に近くで聞こえてきた声に、俺は体を震わせた。
男の声だった。
だが力がなく、勇ましさの欠片もない、死にそうな声ーーー。
「助けて…下さい…!!」
ガシッ!!
「っ!!」
男は途端に俺の腕を掴んできた。
鼓動が速くなり、息が荒くなっていく。


