「ーーーはっ!」
目を覚ますと、真上には青い空が広がっていた。
雲ひとつない空はーーー
どこまでも果てしなく続いているように見える。
「うっ…ん……」
ゆっくりと体を起こす。
俺が横たわっていたのは記憶の泉のすぐ脇だった。
そういえば、俺……
黒犬に撃たれて…
「あっ!」
俺は咄嗟に銃で撃たれた場所を確認した。
しかしーーー
撃たれた3カ所はどこも傷口が塞がっており、服にべっとりと血がついているだけだった。
「っ…これは…」
『それを大事に持ってるんだよ』
ふと、鷹目がくれたリンゴのことを思い出した。
あの時のリンゴの鼓動はーーー
今の俺の鼓動と全く同じリズムだった。
「鷹目……」
お前は俺に命を与えてくれたんだな。
お前は本当にーーー
バカで、お調子者で、
最高の『相棒』だ。
ーーー俺は立ち上がると、シルクハットを手にとってすぐに走り始めた。
意識が朦朧としていた時に耳にした声。
ニカは森を北にぬけたところの丘にいる。
俺はその丘に向かって走り出した。
ーーー待ってろ、ニカ。
今、迎えに行く。


