ーーーブクブクフグ……
沈んでいく。
底のない闇へと、
沈んでゆく。
俺は手元にあるステッキを握りしめると、
ギュッと胸に引き寄せた。
闇へと、
暗闇へと、
沈んでゆく。
暗闇はもう慣れた。
怖くなんてない。
死ぬのだって、
怖くない。
徐々に体の感覚がなくなってきた。
太陽の光を通さないほど人々の魂で溢れたこの泉の中は、暗闇で何も見えない。
ーーーピカァ…!!!
「っ!」
ふと、胸に引き寄せたステッキが光り出した。
それは俺の胸から離れ腕からも離れるとーーー
仰向け状態になった俺の目の前で
見たことのないほどの輝きを放った。
「……っ…」
それはーーー
紛れもなく、
ずっと暗闇の中を
彷徨っていた俺に与えられたーーー
”一本”の『光』だった。
ーーー鷹目。
やっと助けに来てくれたんだな……
俺はステッキと共にーーー
泉の中で溶け、
泡となって消えた。