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兎の消えそうな言葉を聞きながら、俺はその場で硬直していた。
……え?
記憶を見ろ…だって?
なんだ、それ……
「撃…て……黒犬……」
兎はまだブツブツとその言葉を繰り返している。
こいつは…正気なのか?
「黒……犬……」
兎の体から流れる血は、俺の靴にまで及んで来た。
こいつ、こんだけ血を流しているのに…
まだ死んでないのかよ…。
『あれは俺たちのためにあるんだ』
「っ!」
ふとあの頃の記憶が蘇ってきた。
シルクハットとステッキは鷹目と俺のためにある。
そう言って笑いながら帰っていった日々。
鷹目、俺はーーー
俺の知らない鷹目を知るべきなのか?
お前、本当は俺のこと…
どう思ってたんだ…?
兎の手元にあるステッキを見つめる。
あの頃の俺がずっと憧れていたーーー
持ち手が犬の形のステッキが今
ーーーそこにある。


