ーーー数時間前。
スタ、スタ…
黒犬は記憶の泉へと足を進めていた。
兎が来ないという心配は全くしていなかった。
スタ、スタ…
ーーーやつのことだ。
絶対に鷹目の娘を助けに来るだろう…
『ーーー鷹目!
今からあの店を襲撃するぞ!!』
「っ…!」
ふと足を止める。
胸の奥でざわつく何かを、自分の手でしっかり押さえ込んだ。
「スゥ……ハァ……」
ゆっくりと深呼吸をして息を整え、再度前を向く。
ーーー行かなければ。
ーーー鷹目を俺から奪った『悪』を退治しに行かなければ。
そう、これはーーー
ーーー『悪退治』だ。
黒犬は空を見上げた。
もうすぐ太陽の光で明るくなるでろう、空を。
『ーーー鷹目!どうだった!?』
『…あ、えっと…』
ーーーごめん、ダメだった。
鷹目…
お前はどうしてーーー
俺に嘘をついたんだ?