「くれぐれも気をつけるんだよ?
あとこれ、忘れもんだ」
ハカゼは俺の手にステッキを握らせた。
「っ…これは…」
「大事にしておくれ。
実はそれはね、鷹目が持っていたものだったんだよ」
「っ…鷹目が?」
「そうさぁ」
ハカゼは俺の頭をクシャクシャと撫でた。
「っ!」
「ははっ、鷹目にもよくこんな風に撫でてやったもんでねぇ…
あんたを見ていると、鷹目を思い出すよ」
ボサボサになった俺の髪を見たのか、急にニカが笑い始めた。
「兎ではなく猿だな」
「黙れクソガキ」
ーーー俺たちはハカゼに見送られながらも家を後にした。
「世話になったぞハカゼ!
また来るからな!!」
ニカは背後でずっとハカゼに手を振り続けていた。
こういうところは子供だ。
本当にしょうもないガキだ…
「ほら、行くぞニカ」
「分かってる!」
ニカは俺の隣に来るとーーー
ーーーギュッ…
俺のシャツ袖を小さな手で掴んだ。
「私はお前の相棒だものな、なあ兎」
「…ちっ…随分と機嫌がいいんだな」
そのまま俺たちはガイドンの案内で集落へと向かったのだった。
ーーー俺はこの時考えてもいなかった。
まさかーーー
すぐ近くに危機が迫っていたなんて。