もう君がいない



「ここが職員室で、こっちが、、」


特に何も話すことなく、淡々と校内を案内して回る。



何だか、少しイライラしてきた。


だって、蓮は、本当に何も話してくれないんだもん。


話すことがあるはずでしょ?


どうして約束を破ったのか、どうして今さら帰ってきたのか、


、、病気は、良くなったのか。


私は、聞きたいことが山ほどあるよ。




「うん、このくらいかな。どこか気になるとこあった?」


「いや、別に平気。」


「そう。じゃあ、帰ろっか。教室戻ろ。」


「ん。」



スタスタ歩いて教室に戻る。


さすがにもう誰もいなくて、静まり返った教室。


窓が開いていて、カーテンが春の優しい風になびいていた。


机に置いてあるカバンを手に取る。




「茉菜。」


今まで口を閉ざしていた蓮が、ようやく口を開いた。


「何?」


振り返ると、蓮は、真っ直ぐに私を見て立っていた。