空っぽの君を

奈乃にあいてぇーな。

もうかれこれ2週間はあってない。

奈乃がいない学校に行くほど憂鬱なことはない。

そんなことを考えながら家に帰る。

家に着くと玄関に一足のローファーが並べられていた。

誰だ?

「あら、拓人おかえりー」

「これ誰の靴」

「あなたの大好きな子のよ。」

母さんはニヤリとしながら言った。

まさかな。居るはずないっと思いながら恐る恐るリビングに足を運ぶ。

やっぱりな、いねぇーじゃん。

俺は2階に上がった。

いつもなら空いてない隣の部屋のドアが少し空いてないた。

開けるとそこには、

小さい寝息をたてながら寝ている奈乃がいた。

俺の心臓は今まで無いくらい動いていた。

いつもなら長い前髪がかかっている顔も横を向いてるせいでしっかり見える。

相変わらず綺麗に整った顔だった。

そしてこの前より体型はましになっていた。

つい、手に力が抜け鞄を落としてしまった。

その音に奈乃が起きた。

「だ、だれ?」

奈乃からのその言葉は俺の胸を突き破った。

さすがに傷つくぜ。。。

「北条くん?」

あれ?今呼んだ?

「おぅ。」

「なんで北条くんが居るの?」

奈乃は昔は何回もこの家に来てたんだよ。

そんなことも覚えてない奈乃。

「ココ俺ん家」

奈乃は目を真ん丸にして俺を見つめていた。

「奈美おばさんはえっと。北条。あ。」

奈乃は一人でぶつぶつ言いながらやっと理解したらしい。

「奈乃ちゃんー!拓人ー!ご飯よー!」

奈乃の私服。久々に見た。

何年ぶりだ?

3年ぶりくらいかな?

奈乃は奈乃らしい服だった。

趣味は記憶がなくても変わらないものなんだな。

「ご飯だとよ。いくぞ。」

奈乃は重たそうな体をゆっくりと起こした。

体調悪いのか?

「奈乃、体調悪いのか?」

「ずっと入院してたから思うように体が動かなくて。」

「無理すんなよ。」

奈乃とのご飯も何年ぶりだろ。

多分これは奈乃が記憶をなくしてからだから5年くらいか?

何もかもが嬉しい光景で。

俺は最近で一番嬉しかった。

「奈乃ちゃん。髪の毛切りましょ?」

「はい。」

奈乃は顔を隠したくて髪毛切ってなかったのかと思った。

明日から奈乃は大変だろうな。

まぁ俺が絶対に変な虫はつけさせねぇーけど。

母さんは俺を産むまではずっと美容師として活躍してた。

だから腕前は確かだ。

「奈乃ちゃん!ボブにする?」

「おまかせします。」

「奈乃ちゃんならどんな髪型でも可愛いけど、ボブだと顔がしっかり見えてもっと奈乃ちゃんの顔が引き立つは!」

母さんの言う通り奈乃は絶対ショートも似合う。

てか、前髪さえ切っちゃえば奈乃は必ずモテる。

「拓人はさっさと風呂入りなさい。奈乃ちゃん髪の毛切ったあとすぐ入らせてあげないといけないんだから!」

「はいはい」

俺も奈乃が奈乃に戻る姿見たかったのによ。、

俺が髪を拭きながら廊下を歩いてる何かにとぶつかった。

目の前に尻餅をついた奈乃がいた。

それも似合い過ぎていて俺は見つめてしまった。

「ごめん。奈乃」

俺が奈乃に手を差し出すと、

奈乃の小さな手が俺の手と重なった。

奈乃の手。ずっと離したくないっと思った。

俺は握り続けてしまった。

「北条くん??」

奈乃は俺を覗き込む。

やめろ。そんな目で見られると耐ることができなくなる。

「北条くん。じゃなくて拓人な。」

「拓人くん。」

「拓人」

「た、た、くと」

奈乃はあからさまに真っ赤になった。

前まではたっくん。たっくん。ってうるさいくらいだったのにな。

「よろしい。」

俺はこれから必ず奈乃に好きになってもらう。

小学生の時みたいにたっくん大好きって言わせてみせる。