旅行は山の中にある温泉。
先生の車に荷物を詰め込み、出発。
先生の運転でとなりはお父さん。
私とお母さんは後ろの席に座った。
車が出発した時から私はうきうきしていた。
いつもみる外の風景は、初めてみたかのようにいつもとは違って輝いて見えた。
2時間が経ち、温泉のある街に入る前に、休憩をした。
休憩をした後、今度はお父さんの運転で2時間。
車の中では、もっぱらアメリカの医療と日本の医療について。
お母さんは、もともと看護師さんをやってみえた。
だからほとんど三人の会話。だけど、意外と面白いなと思い、聞いていた。
「かなちゃん、話がほとんどわからないよな。ごめんな。」
とお父さんが言うと、となりにいた先生が、
「かな、お前もいつか医者になるんだ。ちゃんと聞いとけ。」
と言うと、
「え!そうだったのか。お父さん、嬉しいな。」
とお父さんが答えた。
「私は医者なんて反対だわ。
だって、かなちゃんの体は決して強い訳じゃないのに、あんな忙しいところ。
もちろん、看護師さんもハードだから進めないわ」
とお母さんが言うと、先生が
「そんなこと言うなよ。かなは今、やごな大学の医学部目指して頑張ってるんだぞ。」
「あらそうなの。それはごめんなさい。
でもね、かなちゃん、きっと幸治に吹き込まれて希望していると思うのだけど、無理はしないことよ。
幸治もお父さんに言われて医者になったけど、幸治のようじ必ずしも医者の仕事が合う人なんて、そうそうないわ。
親が医者だと帰ってプレッシャーで、辞めたくても辞められなくなっちゃんだからね。」
とお母さんが一気に話した。
「そうだな。かなちゃん、もし辞めたくなったら辞めればいい。
いつか結婚して家庭を持ったら、お母さんのように仕事を辞めたっていいんだからね。」
と今度はお父さん。
私は、決意がゆるいだけに、
「はい。」
としか返事ができなかった。
でも、これだけは言わなきゃ。
「さっきからお父さんたちのしている話、すごく面白いです。
アメリカの生活も、すごく憧れます。」
と私が言うと、お父さんが、
「じゃあ、このまま私達とアメリカに行こうか!?」
と嬉しそうに言うとすぐに、先生が、
「ダメに決まってるだろ。かなの体は決して強くないんだぞ。
かなが行きたくても、俺が主治医として許さないからな。」
と真面目にいう。
「まぁ、本当に幸治はかなちゃんが大切なのね。」
とお母さんが言うと、それ以上先生は何も言わなかった。
怒ってるのかな。
先生、私がアメリカに憧れるなんて言ったから、ごめんなさい。
そんな話をしていると、宿泊先の温泉に到着した。



