それから2日後、発作がでることはなかった。
ただ、発作が出るんじゃないかと思うと、入院中は、夜眠るのが怖くて、日中寝ていた。
退院の日は、佐藤先生が仕事を終えるのを待って一緒に帰ることになった。
時刻は夜の8時。
荷物をまとめて部屋で待っていた。
本来、こんな融通はきかないけど、佐藤先生の力で、夜に退院することになった。
その後、外食をすることになった。
「どこで食べたい?」
うーん、今まで外食なんてほとんどしたことなかったから、わかんないよ。
「あまり、外食したことがなくて。」
とうつむいて言うと、
「じゃあ、ファミレスなんかは行ったことないか?」
ん?ふぁみ?
「ありません。」
「じゃあファミレスに行こう。
何でも自分の好きな物を食べれるからな。」
ふぁみ、、、れす。
私はどんなところなのか、ドキドキしながら先生の運転する車に乗った。
車がとまったところは、「ふぁみふぁみ」とかかれた看板があった。
ここがファミレス。
店内に入ると、何人もお客さんがいて、賑やかさに再び胸が躍った。
「何食べたい?」
と聞かれ、メニュー表に目を通す。
うわぁ!何でもある!
「そんなに目を輝かさなくても」
と笑いながら私をみる佐藤先生。
初めてなんだもん。
うーんと考えて、頼んだものはオムライス。
数分して運ばれたオムライス。
初めて外でオムライスを食べる。
一口。
「わっ、おいしいっ!」
「そうか、良かった。
ところで、突然なんだけど、高校出たらどうしたいんだ?
前は働くって言ってたよな?」
と突然、今後の話になった。
「就職を考えています。
いつまでも先生のところにお世話になるのもよくないと思うし、早く一人で生活できるように、稼がないと行けないと思ってます。」
と食べながら答える。
「うちにはずっといたらいい。
もともとは俺達きょうだいだった訳だしな。
家族なんだ。
家族なんだから、いつまでもいたらいいんだ。」
いやいや、先生も結婚されたりしたら、、、
「そういう訳にはいきません。
いつか先生は結婚されて、家族ができるかもしれないし。」
「はは、そんなこと考えたこともなかった。
それは心配ない。
俺は結婚しないから。生涯、医者でいたいから。」
という。
本当かな、先生、もてそうな顔してるのに。
「先生は、おいくつですか?」
あっ、、、口にしてしまった。
こんなこと聞いたら怒られるよね、、、
と、恐る恐る先生の顔を見ると、平然とした顔で
「28歳だ。」
えっ?
私の想像をかなり下回っていた。
何も言えずにいると、
「どうした?見えないか?」
と言われ、慌てて、
「落ち着いてるので、、、」
といってしまった。
これじゃあ、年取ってると思ってたことが、バレバレじゃない。
でも、先生は怒った様子はなかった。
「ところでさっきの話だが、なりたい仕事もないのか?」
と聞かれた。
施設にいたときは、高校出たら就職して、独り立ちしないといけないって思ってたし、、、
特にやりたいことも見つからないし。
というか、考えたこともなかった。
「今まで、就職しか考えてなかったので、特にやりたいことはありません。」
「それなら、大学へ行け。
どの大学に決めるかは、まだ数ヶ月先に決めればいいんだから。
今はどの大学に受かってもいいように、とにかく勉強しろ。」
えっ?大学?
「大学なんて、
行けません。」
「なぜだ?
金か?
そんなことは気にするな。金ならいくらでもある。
俺が出すから。と俺が言っても、きっと親父たちが出すってきかないと思うけどな。」
えっ?大学?
考えたこともなかった。
どんなところなのなもわからない。
とにかく勉強って、、、
いろいろ戸惑いながらも、大学に行くことを半ば押し付けられたような気もしないでもないけど、、、
その日、食事を終えて家に帰った。



