「むくろ君に抱きしめられたい…」
「あんた痴女みたいになってるよ」
美夜さんのそのクールクールなところ嫌いじゃないよ。だけども、ワタシのメンタルはズタズタで…そろそろ抱擁が必要だと思うの。
死にそうだ、死にそうなんだ。むくろ君が好きすぎて死にそうなの。
「むくろ君とおてて繋ぎたい…」
「あんたは幼稚園児か」
うん。どうせなら幼稚園児になりたいよ、幼稚園児ならブサイクでも可愛がって貰えるもんね。そろそろマスクが暑く感じてきた。
「美夜さん、どうしよう」
「襲えば」
「ぬはっ!それはいつもしてるよ!ワタシは抱きしめたいんじゃなくて抱きしめられたいの!!むくろ君のほうから!!」
……美夜さん、スマホいじってないでワタシの話聞こうよ。本当にワタシのメンタルきてるよ、メンタルクリニックでも探そうかな。ああ、泣けてくる。
ワタシは美夜さんに見捨てられたので保健室へと向かう。
保健室の扉を開けば若い女先生がこちらへ振り返った。ワタシが3階から落ちた時、手当てしてくれた人だ。
「センセー、何でもいいので心のお薬下さい。ワタシ死ぬと思うんです」
「あらあら、どうしたの?何かあったの?」
え、ちょ…センセーそんなに顔を青ざめないで下さいよ、別に飛び降り自殺はしませんから。てか、ほんとあれは事故だったんですって…誤解しないで。
ワタシは先生にうながされ、パイプイスに座る。
「心のお薬はないけど、話くらいなら先生聞くから…」
そう言って先生はワタシの向かいにイスを置くとそこへすわった。
「センセ〜っ!!!ワタシに優しいのはセンセーくらいだよぉおおおおお!!」
もうやだ、泣く。マスクを外して、ワタシは顔をビジョビジョにしはじめた。
「みんな!みんなっ…っぐ、酷いんですよおぉっ、ワダジの顔っ!!!汚いって…っ、だ、だからあぁ!!マスクして…っ、る、ん…じゃ、ないですか…ぁ!」
べろんべろんに酔っ払った三十路ババアのようにワタシは愚痴を吐き出した。一歩間違えれば心臓も吐き出しそうだったので慌てて飲み込んでおいた。



