あなたとキスをするまで





「で、なに。昨日は1500円のパフェを奢らされて帰ったわけ?」

「うん!」


さっそく朝一に昨日の幸せを美夜さんにも分けてあげる。


「美夜にもパフェ奢ってよ」

「無理」


ワタシの財布が干からびてしまう。



「イチコ、あんまりマスクばっかしてるとマスク焼けするよ?」

「なにそれ」

「目から上だけ日焼けする現象」



自分のアヘ顔に気付いたあの日以来、ワタシは毎日マスクをしていた。


なにその恐ろしい現象!!!!そんなのなったら恥ずかしくて外あるけなくなるよ!!!!!



「美夜さぁ〜んっ!どうしたら〜!」


「諦めろ」



ういっす。最近バッサリ美夜さんが多い気がする。もうちょっと美夜さんには萌え要素があったはずなのにどこに行っちゃったのかなぁ〜。



さあああぁあああ!!!!むくろ君登校タイムがきましたよぉ〜!!!!!


「むくろくううぅううううんん!!!!おはようございまあぁああすっ!!!」


ワタシはいつも以上に窓の外へ乗り出しむくろ君への愛を叫ぶ。



「昨日は楽しかっ…」

「え?ちょ!?イチコ!!!」


「え…?わぁああ!!」



美夜さんの声はむなしく空を舞う。ワタシの視界はぐるんと回って空をうつした。


落ちるうううぅうううううう!!!!というか死ぬっっっ!!!死ぬっ!!





手を伸ばして、どこかに引っ掛けようとしても空を切るだけで……ああ、ダメだ。ワタシたちの教室は3階にあるもん、足より頭が下にあるワタシの身体は…もう助からない。



不思議と一瞬の間なのにそう思った。



ドカッ、スダッ。


身体に衝撃きて目を閉じた。美夜さんの叫ぶ声がする…ああ、ダメだ、身体が痛い。




「…チコ!!!イチコ!!!!イチコってばーーーーー!!!」


「っは…っ!いったぁ〜」


微かに目を開けると視界いっぱいに葉っぱや枝が広がった。


え?ここどこ?え、木!?あ、そういやすぐ真下には木が植えられてたっけ…木の上に落ちたのか。


下を見ようと動く。


「イチコ動いちゃだめ!」


美夜さんのそう言う声がしたけど遅かった。


ギギッ、パキッ…という音と共にワタシはまた下へ落ちる。