赤い絵の具の少年【短編ミステリー】





「ごめん!お待たせ。」


「……ん。じゃあ、行こっか。」



一緒に帰ることになった私と未来くん。


家の方向は同じらしく、話ながら歩く。



「唐突だけど、明日の朝は、ダメ?」


「全然いいよ!時間は、何時くらい?」


「んーとね。朝の6時に美術準備室じゃ、早すぎるかな?僕、朝の内に描き終わりたいんだよね。」


「全然いいよ!わかった。6時に美術準備室いくね!」



ワイワイと私と未来くんが話していると、突然、未来くんの足が止まった。



「……あれ?ナナ?」


「え、あ、未来。学校帰り?

あ、そちらは、彼女?」



「え、あ、いや、違います!」



私が顔を真っ赤にして否定すると、ナナと呼ばれた女の人は、クスリと微笑んだ。



「ナナ、どうしたの、こんなとこで。」


「ちょっとお仕事で来てたの。」


「大変だね。」


「まあね。」



普段、全く見せない笑みを浮かべる未来くん。


私は、その笑みの先の、ナナさんに凄い嫉妬心を覚えた。


グルグルと黒い感情が渦巻く。



「笹中さん。ここで大丈夫?」



はっとすると、未来くんが目の前にいた。


「あ、うん。じゃあ、明日ね。」


私はそう言うと、ギッとナナさんを睨んで、十字路を曲がっていった。