始めて出会ったのは、
いつものわたしのおっちょこちょいからだった。
「えー…進路室ってどこー⁉︎」
ありえない!
日直だからって、進路室から資料取って来いなんて!!
わたしの名前は周美緒(あまねみお)。
入学してまだ1ヶ月ほどの新入生です!
で、絶賛迷子中…
いや、自分がこんなに方向音痴だとは…
ふらふらと歩いていた時。
あれっ、ここ?
先生の説明通りの、それっぽい部屋を見つけた。
今思えば、
ここが進路室ではなく資料室だと確認していたら、
私たちは出会っていなかったんだね。
「失礼しまーす!」
戸を開けてすぐにだった。
わたしは凍りついた。
目の前に広がる光景、
男の人の首元に噛み付いている女の人。
男の人は首元から血を流している。
彼らと目が合った瞬間、
体が動かなくなった。
な、にこれ…
綺麗…
こんな綺麗なもの、初めて見た。
美しいって言葉がぴたりと当てはまるようだった。
なのに言葉にできないほど儚いの。
そう思った一瞬の間だった。
気付けばわたしは手を引かれ、教室へと連れ込まれた。
ひやりと冷たい壁の感覚が背中に伝わる。
わたしの視界はその女の人でいっぱいになった。
「あ、え、えっと…」
うろたえるわたしをよそにその人はじっとこちらを見つめた。
「あ、蒼井馨…先輩?」
『蒼井響(あおいひびき)と
蒼井馨(あおいかおる)』。
この学校にいれば、たぶん知らない人はいないと思う。
そのくらい有名な美男美女の双子。
兄の響と妹の馨、3年生だ。
近くで見るとほんとに綺麗…
って、そうじゃなくて!
ななな、なにこれっ…
すると馨先輩はわたしのリボンとブラウスのボタンを外した。
「えっ⁉︎」
一体何が起きてるの⁉︎
「少し静かにして。
すぐに終わるから。」
彼女は私の首筋に唇を寄せた。
さっき、男の人…そう、響先輩にしていたように。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してちょうだい。」
心臓はドキドキして、まるで自分のものじゃないみたい。
体中が熱くてたまらない。
息が、止まってしまいそう。
「心配しなくていいわ。
…すぐに記憶を消してあげるから。」
…え?
記憶を消す…?
そこから先輩の肩を掴んだのは
本能的だった。
「消さないでっ…!」
なにか考えて言ったわけではない。
本当に一瞬で嫌だと思った。
忘れたくない。
だって、初めてドキドキした。
心臓が自分のものじゃないみたいに激しく動いてる。
呼吸が苦しいほど。
体は熱くて、まるで…
恋に落ちた、みたい。
馨先輩と響先輩は驚いている。
当たり前だ。
「お願いっ…
消さないで、くださいっ…!」
これが、わたしの運命のはじまり。
