あ い の う た <実話>

隣に居た尚は
瞳を輝かせて感動していたけれど、



あたしは
小さな不安を抱えたまま自遊人を見ていた。



なんだろう…


…いつもとちがう。



自遊人の音の繊細さが
壊れてしまってるような…




とにかく
…いつもと違う。



…いつもの自遊人じゃない


…いつもの涼介さんじゃない



駆り立てるような不安があたしを覆う。



その時、



尚があたしの手を握った。




少し驚いて、
尚の方を見ると


そこには尚の横顔があった。



さっきと変わらず、ライブに瞳を輝かせてる。





なんだかとても安心して、
あたしは尚の手を握り返した。




一瞬、尚がこちらを見た気がしたけれど…



…それには気付かないふりをした。