ライブが終わって…


迷ったけれど、一言挨拶してから帰ることにした。



ちゃんと、ライブの感想、ありがとうってキモチ、伝えたい。




『涼介さんお疲れさまですッ』



この前のことは…
忘れよう。


自分が【特別】だとか、思っちゃいけない。



あたしは意識してないフリをした。




『あ?お疲れさまじゃねーよ!』



あたしは【普通】を装っていたけど、
涼介さんはなぜだかいつもと違っていた。




『…なんで今日は俺の前にいねぇの?』




『いや…なんとなく…』




『なんとなく避けた?』




『そ…そんなことは…ない…です。』




『まあ…なんでもいいけど…。』




涼介さんは凄く不機嫌そうだった。




でも、感想は伝えたい…



『今日のライブ見て……、やっぱりあたしは自遊人が好きだって思いました。』



『涼介さんがいなかったら、今のあたしはないと思うから……』



言葉に詰まる…
上手く言葉にできない。




『お前はさ…ただ、いつまでも俺の前でライブ見てろよ。』





『………え?』
聞き返した言葉を、
遮るように


『……わかった?』


涼介さんに言われて、あたしは深く頷いた。





『気ぃつけて帰れよ?』

優しい言葉と同時に、
ポンっと頭を叩かれた。



【いつもの涼介さん】にやっと戻った気がして少しホッとした。






涼介さんの様子がおかしかった理由…


今考えればわかるような気がする。



けど、この時のあたしはまだ、




そのキモチには、


全く気付いていなかった。