あ い の う た <実話>

珍しく緊張した面持ちの尚がスタンドマイクに手をかけた。



『どーもー![ゲゲゲ]です!バンド名は今考えましたー!笑』



笑いが起こった。



ステージ上でも尚は変わらず、尚だった。




観客は30人くらいだろうか?
その中にはうちのクラスの女子たちの姿もあった。




キャーキャー騒いでいる姿を見て憂鬱になった。





尚はあたしのモノじゃないし、あたしに彼女らを悪く言う権利なんかない。




わかってる。



わかってるけど……。





彼女達を見るだけで、何かモヤモヤとしたものがあたしの心に纏わり付いていく気がした。