豊かな表情を見せるミケに、もっと仲良くなりたいと欲が出た。



「あ、連絡先交換しない?」



その場のノリ、に近い形で俺は切り出した。



「はい、しましょう」



心よく返事をしたみけは、ポケットから端末を取り出す。

画面に映る“ミケ”という文字に心が弾む。

それと同時に今の時刻が目に映った。


「遅いし帰らないと…送ろうか?」

「大丈夫ですよ。家近いですから」

「そっか。…じゃあまた」

「はい」


ひらひらと手を振ると、ミケも同じように返してくれる。


(意外と人懐っこいな…)


ミケを見送って、俺はもう一度画面に目線を落とした。

変わらずに“ミケ”の文字。

初めて話せたことの嬉しさと、ミケのことが少し分かったような達成感にも似たようなものが胸を占める。

あの、まっすぐに伸びる声の主がどんな子なのか。

もっと知りたい。

あわよくば自分を見てほしい。


じわじわと、曖昧だった気持ちが明確な形を胸の中に作ろうとしていた。