こだまする三毛猫の声




みけを見ると、少し困ったような顔をしている。


でも、すっと俺に近付いて


「シュウさん、あっちのエリア見ましょう?」


袖を掴んできた。


まるで猫がすり寄ってきたみたいな。


めずらしく甘えてきたみたいな。


やばい、嬉しい…。


なにこの可愛いやつ。


でも、あれだな。


みや のため、だろう。この行動は。


…まぁ、嬉しいからなんでもいいや。


そのままの流れで みけ と水槽を眺める。


横で大きな水槽のガラスにへばりつくようにしている みけ を見て


「魚、食べたいの?」


と口から言葉が出た。


みけ は言葉に反応して俺を見上げ


「猫扱いしないでください」


と不服そうな顔をする。


予測不能で、何を考えてるのか分からない猫。


かわいい黒猫。


俺だけに、甘えてくれないかな。


薄暗い館内で目を輝かせるみけの瞳を、水槽の青が照らしていた。