恋の味

バタッと音がしなかったのはもちろん俺が受け止めたから。


「…⁉︎にこ!」


「⁉︎どうした!」


二人とも足がふらついてるはずなのに、走ってにこに駆け寄る。


俺は、俺に倒れてきた和恋の額に手を当てる。


…熱い。


「熱がある。」


高熱だと思う。


俺の温かい手で触っても暑いんだ。


俺は躊躇することなく、和恋をおんぶする。


和恋の体は驚くほど軽く、熱かった。


小さいから軽いのは仕方ないけど。


俺がおんぶの体勢になるまで、何かを話し合っていた2人が、顔を上げた。


「先に行って先生に伝えとくわ。もう少しで熱出したにこが運ばれてくるって。一応私たちのがかなり早かったら、先生方の応援も呼ぶから。…一人で陸は平気?」


「うん。」


「じゃ、俺とももっちで先生呼んでくっから。なんかあったら休んでろよ!」


光輝と春風は、風のように走り去った。


足が痛いのなんか忘れたみたいに、ひたすら、ひたすら走ってる。


和恋のために動ける奴がおおいのは、和恋の性格から十分読み取れるだろ?


「にこ、頑張れよ。」


そう声をかけてから、俺も走る。


足腰は鍛えてる。


残り数キロなら問題ないはずだ。


大丈夫だ。


にこは何度も俺の名前を呼んだ。


気を失ってるはずなのに、腕は俺の首にちゃんと回して、落ちないようにしている。


下り坂は、危ないから走れない。


歩くのさえもどかしかった。


背中の温度は…上がる一方。