恋の味

出発の合図をした男の先生がかけてくる。


「なーんですか武藤センセ。」


あ、武藤先生って言うんだ。


にこ、初めて知った。


「いやぁ、俺はゆっくりお前らのペースで進んで欲しいんだが…教頭がうるさくてなぁ。」


ちらっと後ろを確認してるから、学校内に教頭先生いるのかな?


「えー早く食べろってことですかぁ?」


「まあ、はっきり言えばな。でも俺は賛成しないな。これから歩くんだし、できればゆっくりよく噛んで食べろよ?」


「センセー矛盾してますよー?」


武藤先生は戻ってっちゃった。


時計を見ると、もう12時30分になってる。


多分、予定時間内!


…のはずなんだけどね、周りの人はみーんないなくなっちゃったの。


「俺ら、マイペースだからなぁ。」


光輝くんは武藤先生にお弁当をもう一つもらったみたい。


…大食いなんだなぁ。


「じゃあ、光輝が食べ終わったら、出発しよっか。」


腰をあげるももちゃん。


りっくんも立ち上がった。


手を洗いに行っちゃったんだ。


座ってるのはこうきくんとにこの二人だけ。


光輝くんは二個目だけど、にこは食べるのほんとーに遅いから。


「あれ?にこはおにぎり一個しか食べないの?」


にこあるおにぎりのうち、もう一個はまだ食べてないんだ。


まだっていうか、歩くの疲れちゃって食べる気になれないよぅ。


「光輝くんいる?」


「ダメだよしっかり食べないと!」


でも、もう入らないよ。


「お願い食べて!いらないなら捨てるから!」


捨てるというところで光輝くんの耳が動いた。


やっぱり、光輝くんはもったいないって思う、いい人だねぇ。


「本当に食えないのか?」


「うん。ごめんなさい…」


光輝くんがにこのお弁当からおにぎりをとってくれた。


「ありがと。」