ツバサは普通に生活していたはずだった。
それなのに、あんなことが起きてしまうなんて……。


~1~

あの夏の暑い日。
蝉の声がミンミンと響き渡る夕暮れ。
ツバサは高校はじめての夏休みを楽しんでいた。高校へ入学して、友達ができ、この日は友達と遊んだ帰りだった。

「バイバイ!また明日遊ぼ!」

ツバサは友達に大きく手を降る。

「うん、また明日ね!」

声がツバサの耳に届いて、友達が走って帰っていく。

ーーよし、私も帰らないと。

ツバサは、はぁっと息を着いて歩きだす。
歩き出そうとすると、近くからうぇぇんと小さな子の泣き声が聞こえてきた。

ーーん?どうしたんだろ?

ツバサはその声の主を探すべく、あたりを見回す。

ーーいた、あそこだ。

近くの交差点の公園からだ。
見つけた泣き声の主は小さな女の子だった。4歳,5歳ぐらいだろうか?短めの黒髪で空色のグラデーションが掛かったワンピースを着ている。今の季節にはぴったりの服装だった。
ツバサは女の子に声を掛ける。

「どうしたの?何かあったの?」

女の子はグスクス言いながらもツバサの質問に答える。

「ママが居なくなっちゃったのぉ~~……!ママどこぉ~~……!!」

親とはぐれてしまった女の子。迷子のようだ。
見つけてあげたいと思ったツバサは女の子に居なく優しく言う。

「そうなんだ。お姉ちゃんと一緒にママ、探そう?この近くにいるかもしれないよ?」
「ほんと……?」

女の子が不安げにツバサを見る。

「うん!一緒に探そう!」

そう笑顔でツバサは言った。
女の子もこくり、と頷いた。