カチン、と頭の中で音が鳴る。




いつもの歯車が欠けたような不協和音だったけど、不思議と不快感はなくて。





じりり、となり始めた目覚ましを静かにとめた。





日付が戻っていることに息をついて、私はもう一度目を閉じる。





久しぶりの二度寝。





布団がこんなに居心地の好いものだなんてことを、今の今まで忘れていた。






ぬくぬくとまどろむ8時前。




馬鹿みたいに枕に顔をうずめて、あったかいなとひとり呟いた。







…かちり。






長針が0を、短針が8を指示したと同時、ふすまが破裂したかのように勢いよく開く。






「オイ、起きろ!いつまで寝てんだ」





薄目越しに見えた涼ちゃんの顔。




愛しさ、悲しさ。



前回失ったものの感情を引きずりかけては「大丈夫だ」と自らそれを絶って。





彼の名を呼ぶ代わりに「んあ」と間抜けな声を上げて、あと五分と布団にくるまった。






「誰が5分も待つかボケ!



いいから早く起きろ!遅刻するぞ」




ドス、と鈍い音とともにヒットしたパンチ。




それほど痛くなかったけど大げさに「痛い!」と叫んで。