「……………ざけんなよ」
突然荒々しくなった涼ちゃんの語調。
ふいに顔を上げたと同時に頭の後ろが強く押さえつけられて。
何か温かくて硬いものが頬に押し付けられる。
ファサ、と髪の毛が指と指の間で束になってこすれる音を、確かに耳の後ろで聞いた。
鼻をかすめた知り尽くしてる匂い。
涼ちゃんの家の柔軟剤の香り。
息を吸ったつもりだったのに、逆に吐き出していたのか。
胸板から跳ね返ってきた吐息が水蒸気となって顔の肌をうっすらと湿らせて。
涼ちゃんに抱きしめられているのだと、
今私は彼の腕の中にいるのだと気付くのに、
酷く長い時を要する。

