「おい、起きろ!」



呆れ顔の涼ちゃんが、反転した状態で私の顔をのぞきこむ。



さらりと揺れた前髪が手を伸ばせば届く位置にあるのも、




もう目に焼き付いた光景で。




「おい?」




全く反応のない様子に、彼は訝しげに私の頬を叩いた。




温かい。



始まりはいつも温かい。






また、今回も日がくれる頃には


このぬくもりを奪ってしまっているのだろうか。




そんなハズはないと否定できない。


もう、毎回の事なんだ。


そう、心の中でゆっくりと呟いた。






ふと、何かの琴線に引っかかった「毎回の事」という一言。






「―――――――………っ」







その「何か」が何であるかも認識できていなかったのに、






その瞬間、
それは唐突に吐き気に変わる。






毎回の事?


何それ。



涼ちゃんが死ぬのは毎回の事?




酸っぱい何かが喉元へとせりあがってきて。




………私は、




――――――――私はいつから、







涼ちゃんが死ぬことに
慣れてしまったのだろうか。