まあ、顔や口調が怖いから誤解もされやすいけど、と
4限目のお腹が減る時間帯、
そんな風に涼ちゃんを分析しながら英語の小テストを受けていれば、グーとかすかにお腹が鳴った。
ほとんど聞こえないほどの小さな音でほっと胸をなでおろすものの、絶え間ない空腹感がじわじわと胃を苦しめていく。
…と。
斜め前の席の涼ちゃんが、突如先生の目を盗んでぱっと私のほうを向いて。
ちらちらと全体の様子を窺いながらも、皆が見て見ぬふりを決め込んでくれることを確かめるや否や、
躊躇いなく
ぽい、とくしゃくしゃになったプリントを私のほうに投げる。
軽い音を立てて着地したそれ。
「…?」
これ何?と疑問に思いながらも、
開けろと促す涼ちゃんの視線に負けて、極力音をたてないようにそっと開く。
皺くちゃになったプリントの中には、飴玉が二つ入ってた。
びっくりしてばっと斜めに目をやれば
「ばーか。」と動いた涼ちゃんの口。
悪戯気な表情に見惚れていればそのまま彼はべ、と舌を出して。
その上に乗ったまっかな飴は「共犯な。」という意味なのだろうか。
あざとい、…というかズルい。
結局のところやっぱり好きだ。
でも「幼馴染」でしかないということが喉に突っかかった小骨のような違和感と痛みを残す。
涼ちゃんからもらった飴は私の大好きないちご味。
じんわり甘くて、ほのずっぱかった。

