「オイ、起きろ!」



黒いニットの帽子、秋に似つかわしくない冬物の黒コート、




高い鼻、糸のように細い瞳、


右ほおに目立つほくろが一つ。







先に不審者の容貌を事細かに通報しておく。







私たちが体育の授業をしている最中に、ナイフ男が捕まったという放送が校長直々の声で入った。





帰り道、何かあっても対処できるようにと大人が集まる職員室近くに、わざわざ遠回りして足を運ぶ。







涼ちゃんが先生に呼び止められて、大量のプリントを運ぶ手伝いを頼まれた。




「やめとこうよ。」




止めてもだめだった。



「俺が手伝わなきゃ先生が大変じゃねーか。」




そういって先生から荷物を半分受け取って、そのまま上がっていった校舎脇の職員階段。







涼ちゃんは荷物ごと足を踏み外す。




助けようと手を伸ばした先生も、巻き添えで亡くなった。





ダメだ、先生に会ってはいけない。





――――リセット。