「七海」



私の名を呼んで、
悪戯に口角を上げる涼ちゃんの顔。




優しく大きな手のひらで、
頭をなででもらう感覚。





また、他愛ない話をして
彼のとなりで笑いたい。






彼との思い出と願いが、失いかけた正気をギリギリで繋いで。





ぐっと呑み込んだ吐息の欠片は、鉄臭い血の味がした。



「…いやだ。



私は、諦めない。

絶対に正解を見つける。



無関係な人は死なせない。




………涼ちゃんも、死なせない。





「正解」が見つかるまで、私は今日を繰り返してやる!!」








黒い神様に向かって叫んでいるようで、


本当は気を失ってしまいそうな自分を奮い立たせていた。







今すぐにでもくずおれて、すべてを投げ出してしまいたい自分を、何とか無理やり消し去ろうと声を枯らした。











私の無謀な宣言を受けて、黒い神様は呆れたように手を振る。









『馬鹿みたい。まあ、頑張って。』









カチン。

いつも頭の中で鳴る音と似た、懐中時計の開く音。






―――息を吸い込んだ。