カチンと頭から音がする。







じりり、


耳に訪れかけた目覚ましに、勢いよく手のひらを打ち下ろす。







それはバネが壊れたような悲鳴を上げて、その部屋に再びの静寂をもたらした。







すぐさま目をやったカレンダー。


時計の時刻も日付もすべて10月19日のまま。








飛び起きるように身をおこせば、走ったばかりのように息が切れていて。






肩で呼吸しながら、顎から滴る涙をぬぐう。





さっきまでぼろぼろに黒くすすけていたはずの制服を手に取れば、






かすかな柔軟剤の香りが鼻先をかすめる。




着古されてはいても綻び一つ無いそれが確かに私の手の中にあって。








―――…8時、だ。






制服にそでを通したと同時、パアン!と小気味良い音とともに、閉じていた扉が勢いよく開いた。







「オイ、起き…ろ?」







消えていく涼ちゃんの声に「おはよう」を重ねた。







私の手を引っ張って、自分だけ轢かれてしまった涼ちゃんは今、






目の前できょとんと眼を見開いていて。



ふと見た自分の手首はただただ白く、痣があったなんて信じられないくらい普通だった。







もう間違わないと心に決めながら込み上げてくる涙を必死に呑み込む。





「今日は私、起きれたよ。」







胸元の懐中時計の感覚だけを支えにして、私は何とか微笑んだ。