昔は「七海ちゃん!」と可愛い笑顔で手をつないでくれたり、
「女の子に手出しちゃいけねーんだぞ!」と、
勇敢に近所のいじめっ子と戦ってくれたりしたものだが、今や立派な男子高校生となった涼ちゃんは、
口うるさいお父さんのごとき成長を遂げてしまっていた。
切れ長の目に無造作ヘアー、強面だけど端正な顔立ち。
見た目のスペックは高いのだが、過去の天使の面影は微塵も残っていない。
それに残念さを覚えるとともに、
どこからか耳に入ってくる
「涼君ってかっこいいよねー。」という女子たちの黄色い叫びに苛立ちを覚える。
私は小さい時から仲良いよ。
羨ましいでしょ?と声を大にして叫びたくなる時もある。
……要はつまり。
「おら、朝飯ちゃんと持て。
こぼすんじゃねーぞ。」
「海苔なし塩おにぎりなんてこぼしようがありません~。」
「ああ?
それは具入れろという遠回しな嫌味か?
作ってきてやっただけ感謝しやがれ。」
「うちのお母さんは毎日「涼君に感謝!」って言ってるけどね。」
いつも私をおこしに来てくれて、仕事が早いお母さんの代わりに朝ごはんを作ってくれる。
世話焼きでぶっきらぼうな幼馴染に、私は想いを寄せているのだ。