▼リセット。





「…おばちゃん?」




いつも快活な彼女の声は、



聞いたことがないほどに震えていた。





「…七海ちゃん…


涼が…ッ…涼が………っ」





繰り返し涼ちゃんの名を呼んでは息を止める。





どうしたのと問うても返事はない。



ただただ電話の向こうから聞こえる悲痛な声が、




一方的に私の耳を抜ける。



ぶちまけたいほどに大きな不安が募っていくのに。





電話の向こうのおばちゃんの泣き声には、それを聞くこともできないほどの怖さを感じる。




そんな中、バタバタとけたたましい足音とともに、




息を切らして飛び込んできたお母さんの姿。




仕事着のままでメイクもぐちゃぐちゃ。




そんなひどい姿を気にも留めず



電話を片手に呆然とする私を見据えて。




「七海…っ」





乱れた髪を直すこともせず、お母さんは私の名を呼んだ。





どうしたの、と笑おうとしても笑えなくて、私の顔はひきつるばかり。



めまぐるしく何かが起きていることだけはわかった。



それを、私が聞きたくないことも。





それでもこの不安を取り去りたい自分も当然のようにいて、




繰り返しどうしたのと声を発する。





発したそばからその問いはかすれて暗い部屋に吸い込まれていく。





お母さんは、泣いていた。







『...ーーー涼くんが、死んだって。』