「…おばちゃん?」
いつも快活な彼女の声は、
聞いたことがないほどに震えていた。
「…七海ちゃん…
涼が…ッ…涼が………っ」
繰り返し涼ちゃんの名を呼んでは息を止める。
どうしたのと問うても返事はない。
ただただ電話の向こうから聞こえる悲痛な声が、
一方的に私の耳を抜ける。
ぶちまけたいほどに大きな不安が募っていくのに。
電話の向こうのおばちゃんの泣き声には、それを聞くこともできないほどの怖さを感じる。
そんな中、バタバタとけたたましい足音とともに、
息を切らして飛び込んできたお母さんの姿。
仕事着のままでメイクもぐちゃぐちゃ。
そんなひどい姿を気にも留めず
電話を片手に呆然とする私を見据えて。
「七海…っ」
乱れた髪を直すこともせず、お母さんは私の名を呼んだ。
どうしたの、と笑おうとしても笑えなくて、私の顔はひきつるばかり。
めまぐるしく何かが起きていることだけはわかった。
それを、私が聞きたくないことも。
それでもこの不安を取り去りたい自分も当然のようにいて、
繰り返しどうしたのと声を発する。
発したそばからその問いはかすれて暗い部屋に吸い込まれていく。
お母さんは、泣いていた。
『...ーーー涼くんが、死んだって。』

