「ひどい~


暴力はんたーい。


女の子を殴っちゃいけませんって習ってないの?」






「お前を除く、だろ。


下らねえこと言ってるヒマがあったら早く飯食え。遅刻すんぞ」










毒舌を発揮されながら、ポイと投げられた綺麗な三角形のおにぎり。





塩しかまぶされてなくても十分おいしいそれを、無性に食べたくなったのは久しぶりだった。






いつも吐いちゃっててゴメンね。





心の中でそれまでの19日の事を謝りながら、お母さんよりも丁寧に巻かれたラップをはがしてかぶりつく。








「…ふふ、美味しい」







口元がほころんで。



涼ちゃんの方を向いてはっきりと伝えた。





『涼ちゃん、いつもありがとね』






突然の私のお礼に一瞬ぎょっと表情を歪めた彼は、





少しの間ののち、一気に頬を染めて顔をそらす。







「…おう」







戸惑いながら、でもしっかりと耳に届いたその返事。





照れなのか本当に遅刻寸前なのか。






「とにかく学校行くぞ」と慌ててスポーツバックを肩にかけた涼ちゃんにうん、と元気よく頷いてみる。







今までループしてきた過程で、黒く埋め尽くされたノート。







表紙はよれよれ、そこらじゅうにシャーペンの穴や筆圧の跡がついたそれを







もうガラクタとしか言いようがない懐中時計とともに勉強机の上に置いた。







代わりに手を取った制服に、今日で役目も最後だねと呼びかける。






8時30分。





――――清々しい朝だ。