「お前、名前は?」



倉庫へ向かっている途中、男が聞いてきた。



名前…。



「雫…。雫 ノア」



咄嗟に思いついた名前を口にした。



本名を言うわけにはいかない。



本名で過ごしていたら、いつか必ず覆面男に見つかる。



街では雫 ノアとして生きよう。



「俺は榊原 蒼。李凰の総長だ」



「李凰?」



何それ?



「暴走族の族名だ」



族名…。



なるほど。



榊原 蒼は李凰という族の総長…。



「そいつは、相模 俊。幹部だ」



私がお姫様だっこしてる男を顎で差して、そういう。



相模 俊か。



そういえば、さっきの男も俊って言ってたっけ。