本当に"女"っていう生き物でいるのが面倒だ。




「 ッブス!キモいんだよっ 」

私がまだ中学生の時。

「 ブスはブスなりにしてろよw
  いくら、可愛い服きたって顔が駄目なら 
  似合わねーんだよw 」

どうして、そんな事を言うの。

私だって…

「 …私だって、好きで女に生まれてきたんじゃ    ない… 」


女は可愛くないといけないの。
女は豪快では駄目なの。


女は男よりしっかりしていないと
変な目で見られる。


どうして、女は許されないのに。
どうして、男は許されるの…?


女は全てに対して不利だ。


だから、女は面倒だ。





中学を卒業し、高校に入学すると共に
私は私自身を隠した。


名前は香奈【かな】から
真琴【まこと】へ。

容姿も女から男へ。

いわゆる、男装というものだ。

女とバレないように、学校に通うことにした。



男装、男でいたら何か変わるかもしれない。
そう考えてた。




入学してから一週間後…

俺は自分というものを隠して、
学校へ向かった。



「 ねぇっ、あの人見てっ!っちょーっかっこい  いぃ〜っ!! 」

学校につくと、いつも女子や男子やら来る。

前の自分でいるより、男でいる方が
周りからの視線が、良くなった気がする。


俺が何か失敗すると皆、笑顔になったり、
声をかけてくれる。



こんなに良いことがあるなら、
いっそ、男で生まれてきたかった。



キーンコーン
授業終了合図のチャイムが鳴った。

トイレに行きたくなった。
あくまでも、俺は男装してるわけで、
トイレは女の方か男の方かどっちに入れば、
いいか、わからない時がある。

そんなことを思いながら歩いていたら
トイレの前まで来てしまった。

こんなことでソワソワしていたら、
逆に、不自然だと思う。

俺は思い切って男子トイレの方に
入ってしまった。

入ったからにはもう、戻れない。


…丁度、男子はいなかった。
( よかった… )

一番、奥にある洋式トイレに入ろうとした時…

トイレの外からクラスの男子が入ってきた。
( …え…いや…やばい…やばすぎる…っ )

と、とりあえず、洋式トイレに隠れよう。

「 …あ、まじか。洋式トイレ開いてねえ。
  待つか… 」

……………え…?
えええええええええええええっっ!!!!

やばいやばいやばいやばいやばいっ!!

いや、ここで、普通に出ればバレないよ!
大丈夫だ。俺は男で…ここにいるのは…
普通のこと…だよ…。


そう言い聞かせ、男として洋式トイレから
出た。

クラスの男子を無視して行こうと、
前を通っているとき…

手を掴まれた。

?!

「 なぁ。前からさ、思ってたんだけど、
  お前、ホントに男か? 」

「 な、なんだよ。急に。男に決まってんだろ。
  男子トイレに、入ってんだから。」

この場から、早く逃げなきゃ、バレるっ

「 …そうか…? 」

どうにか、バレないでくれ…
「 そうに決まってんだろ。」

「 じゃあさ、男同士ならできること。
  上脱いで… 」

えっ、嘘。バレる…いや、その前になんで、
脱ぐの…

「 腹筋見せろ✨ 」

………。
一瞬でも変なこと考えてた自分が
恥ずかしく思えた。

「 いや、なんで腹筋見せなきゃいけないん
  だよ。」

「 普通に見せられるだろ。男同士なんだから
  。」

バレるな。完全に。これは終わった。

「 なにお前w男同士なのに
  恥ずかしいのかw 」

「 いや、そんなんじゃ… 」

「 なんだよwんじゃ、俺が脱がすー。」

無理無理無理無理無理無理無理無理。

彼、玲愛【れお】の手が
自分のシャツのボタンにかかる。

「 …や、っめ…っ! 」

ダメだ。本当の男子の力は強すぎる。
とてもじゃないけど、勝てない。

ボタンにかかっている手を振り払おうと
したけど、両腕を掴まれて、
動けなくなってしまった。

私は、思わず目を閉じた。

………………………………。

さっきまで、あんなに声が響いていたのに、
今は静かだ。

私は、閉じていた目を開けた。

私の目に映った光景は…




「 …………女……? 」

玲愛の手が緩んだ。