「おーい、京介〜京介〜」


玄関先から落ち着きのない大きな声がしている。


「何やねん、うるさいな」


俺はそう言いながら時計に目をやると朝の6時だった。



俺はぶつぶつ言いながらも玄関に向かった。


「何やねんこんな時間に」


「おう、悪い悪い。良い話があってな」


「とにかく部屋に入れよ」


そう言うと彼は俺の部屋に静かに向かった。


彼は俺の中学の同級生で名は古井孝史。


お調子者で落ち着きのない男だがどこか憎めず俺達は仲が良かった。


「玄関先であんな叫ばんと電話してこいよ」

俺は少し呆れ顔で言った。


「いやいや、何回もしたけど出やんから来てんやん」


孝史にそう言われて携帯を見ると孝史から5件も着信が入っていた。


「あっ、ホンマや。マナーモードになってて気付かんかったわ」


それを聞いた孝史は少し得意気な顔をした。


「それにしてもこんな時間にうちに押しかけなあかん程の良い話って何?」


「明日は日曜日やし京介仕事休みやろ?」


孝史は何故だか興奮気味だ。


「いやー、ホンマは休みやねんけど明日は仕事やねん」


「えっ!マジで!じゃーあかんな……」


孝史はかなり残念そうな顔をしている。


「ってか、一体なによ」


「いやー、高校行かんと働いてる京介は出逢いもないやろうから女の子紹介したろと思ってんけどな」


俺はようやく話が理解出来た。

孝史は話を続けた。


「俺の同じクラスのツレが明日、市内の女の子3人と合コンの話を持って来てくれてんけどな〜」


「そうかぁ……せっかくの良い話やけど明日は絶対に休めんからな」

俺がそう言うと孝史はさらに残念そうな顔をした。


「まっ、仕事やったら仕方ないな。京介は俺らと違って一応社会人やしな」



「別に大工になりたくて今の仕事してる訳じゃないけど中卒でも雇ってくれてるからやらな仕方ないしな」



「まっ、そうやなー。せっかく京介にも彼女が出来るチャンスやったけど今回は別のメンバーと行ってくるわ」



孝史はまた残念そうにそう言った。



「また次の機会に頼むわ。明日は俺の分まで楽しんで来いよ」


俺はわざと明るく孝史に言った。



「集まる時間は夜の8時やし仕事終わって来れそうやったらまた電話くれよ」


「明日は仕事終わったら親方に晩飯付き合えって言われてるからどっちにしても行かれんわ」



俺の返答に孝史はやっと諦めたみたいだ。



「そっか。じゃ取り合えず俺が仲良くなっといて次の機会作るわ」



孝史はそう言って残念そうな表情からいつもの孝史に戻った。



その後は他愛もない話で盛り上がり、しばらくして孝史は帰って行った。



俺はそのまま仕事の用意をして仕事場へ向かった。