紡さんが言い終わらないうちにそう尋ねる。

「何か新さんに言えない話があって此処まで着いてきたって感じですよね?」
確かにここ数日、新さんはデザインに納得できなくて苛々しているけれども。
「ふふ。流石流石。鋭いですね。ちょっとお願いをしたくて――新の前では憚れるようなね」
勿体ぶった言葉に、何を言われるのか冷や冷やしながらもカフェまで歩く。もう20人ぐらい並んでいるけれど、目の前だ。なのにその道が長く感じるのは隣の人からのプレッシャーだ。

「今夜、俺に時間をくれないかな?」
「ぶっ」

想像していたよりも、台詞くさい言葉に思わず変な声が出てしまう。
「……喜ぶならもう少し可愛く喜んでくれるかな?」
「お、驚いたんです。誤解を招くような誘い方止めて下さい」
「で、空いてる? いや、空けてくれますよね、俺の為に」