「じゃあ、社内の案内ついでにこれ、配るから着いてきて。他の事務は今、出払っているのよ」
台車の中に段ボールが三個積まれている。
研修期間は可愛くないスーツだし、スーツに合わせてヒールの高い靴で来たからちょっと後ずさってしまう。
「どうしたの? 返事が無いけど」
「はい。お願いします!」
意外と重たい台車を引きながら、事務室を出る。
廊下にはもう人の気配はほとんどなく、静まり返った部署に入るのは少し緊張する。
「あの、この台車の中身はなんですか?」
「ああ、毎年恒例の新入社員の歓迎会の案内書よ。封筒に、ウチの社の刻印シール貼って、昨日は事務総動員で徹夜だったんだから」
「歓迎会……」
それって、私も行けれるのかな?
派遣だけど、一応新入社員と同じ日から出社してるけど。
「駅の隣の、ニュークラウンホテルの会場を貸し切っての立食パーティーよ。社長の話が長いから、乾杯まで片手で持ったグラスがプルプルしちゃうし笑顔は引きつるし。あ、今年は副社長なのかしら?」



