「で、君がデザインに色を指定してた」
急に声のトーンが低くなり、笑顔が顔から消えた。
「『MIRAGE』から理恵子さんのデザインの色合いが斬新で――艶やかで美しかった。俺はあんな人を魅了するような鳥肌が立つような、何か感動できるようなデザインを世に送り出そうと理恵子さんに会いに行きました」
表情が分からないので、ずりずると後ずさると、手すりに背中をぶつけてしまった。
紡さんの顔を見上げると、すぐに両端の手すりに長い手を伸ばし、私を閉じ込める。
「彼女は俺達の企画に参加できないけれど、資金は提供してくれて、もし孫がこの道を選ぶなら、俺達に手を貸してあげて欲しいと耳にタコができるぐらい仰ってましたね」
「つ、むぐさん」
「そんな、何も知らない無垢なフリをして――君は嘘つきですね。本当はもう才能を持っているのに」
「あ、あの」
「あんな世界を描けるんだ。君の事を俺はもっと、奥の奥の色まで見て見たいですね」
ふっと甘く笑って顔が近づいてきて――キスすれすれの所まで来て逃げられない私は目を瞑る。



